医学生のeveryday

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医学生の分子細胞生物学学習日記(7)

細胞には、複製の誤りを修正するDNA誤対合修復という予備の系がある。

 (複製装置が犯す誤りの99%を修正)

誤りの頻度;DNA複製(校正なし)…1/100,000

            DNA複製(校正あり、誤対合の修復なし)…1/10,000,000

            DNA複製(誤対合の修復も含めて)…1/1,000,000,000

 

複製装置がコピーを誤ると、間違った対合をしたヌクレオチド(誤対合)が必ず生じ、これが修正されずに残ると、次のDNA複製の際に永続的な変異となってしまう。誤対合修復タンパク複合体は、DNAの誤対合を識別し、DNA鎖の誤りを含む部分を切り取り、取り除いた部分を再合成して埋める。どちらに誤りがあるかを識別するためにも、誤対合修復系は必ず、新しく合成されたDNA鎖を切り取る。細菌では、元の親DNAが持つある化学修飾が、新たに合成されたDNAには存在しない。また、細菌以外の細胞も、何らかの方法で新たに複製された鎖と親DNAを見分けている。

 

がんを防ぐには、誤対合修復が特に重要な役割を果たしている。がんは多数の変異が蓄積した細胞から生じる。誤対合修復遺伝子の変異のある細胞は、正常細胞に比べて急速に変異を蓄積し始めるため、誤対合修復遺伝子の変異を親から受け継いだ個体はがんになりやすい。(RNAポリメラーゼに校正機能がなかったらがんになる)

 

二本鎖切断…染色体がすぐに小さい断片へと分解してしまい、遺伝子が失われる恐れがある。

 修復 1.非相同末端連結(DNA断片が離れてどこかに行ってしまう前に、切れた末端を急いでつなぐ方法)

      …切断された末端を特殊な酵素群がきれいに整え、DNAリガーゼがこれを再びつなぐ。この整えるときに、連結部位のヌクレオチドが失われることが多いという、素早いが、代償も払う。元通りにならなかったために遺伝子が働かなくなると、重大な影響が出てしまい、リスクが大きい。

    2.相同組み換え(無傷の二重らせんを鋳型に使って、損傷した二重らせんの切れた相補鎖を修復する)

      …細胞分裂に先立ってDNAが複製された直後が多く、この時倍加した二重らせんは互いに接近している。修復を始めるには、ヌクレアーゼが2本のDNA鎖の5‘末端を切断部から削っていく。次に特殊な酵素の力を借りて、切れた3’末端が相同なDNA二本鎖に侵入し、塩基対を形成しながら相補的な配列を探す。ぴったり合う長い領域が見つかると、この相補鎖を鋳型にして、侵入したDNA鎖をDNA修復ポリメラーゼが伸ばしていく。修復ポリメラーゼが切断部位を通り過ぎた後で、修復された新しい鎖が本来の相手と再び出会い、塩基対をつくって、壊れて離れていた二重らせんの2本の鎖を対合させる。そのあと、両方の鎖の3‘末端でさらにDNA合成が起こり、DNAリガーゼが切れ目をつなぐと修復が完了する。

 

細胞には絶えずDNAの偶発的な変化が生じ、それが蓄積して細胞分裂の際に子孫細胞に伝えられるため、細胞ががんになる可能性は年齢とともに大幅に増大する。

 

鎌状赤血球貧血症…2個のβグロビン遺伝子の片方だけに鎌状赤血球変異がある場合には、正常遺伝子で補完されて個体に害は生じないが、変異βグロビン遺伝子を2コピー受け継いだ個体は、鎌状赤血球貧血を発症する。鎌状ヘモグロビンは溶解度が低く、細胞内で繊維状の沈殿をつくるため、これをもつ変異赤血球は鎌の形になってしまう。鎌状赤血球はもろくて血液中で裂けやすいため、赤血球数が減少して貧血となる。マラリア原虫は、鎌状赤血球型のヘモグロビンを持つ赤血球ではほとんど増殖しないため、マラリア抵抗性が高まる。

 

 

 

 

ヒトの生体の細胞でテロメラーゼ活性を有する…精巣などの生殖細胞、幹細胞、刺激などを受けたリンパ球、がん細胞

   (ほかの細胞は60回程度分裂すると老化して細胞分裂できなくなる)

 

転写に必要なもの…鋳型、プライマーR、4種の3リン酸、DNAポリメラーゼ

 

RNAはDNAの10倍程度の数