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医学生の分子細胞生物学学習日記(23)

長鎖非翻訳RNA…長さ200塩基以上。

        Xist…長さ約17000塩基の巨大なRNA分子は、X染色体不活性化に重要な役割を果たす。発生の初期には、雌の細胞の核ではそれぞれ、X染色体の一方だけから転写産物Xistがつくられる。これがその染色体にくっついて覆い、酵素クロマチン再構成複合体を引き寄せ、高度に凝縮したクロマチンの形成を促す。

         一部の長鎖非翻訳RNAは、ゲノムのタンパク質に翻訳される領域からつくられる。ただし、間違った側のDNA鎖を転写するので、このようなアンチセンス転写産物が、同じ領域からつくられたmRNAに結合して、その翻訳や安定性を調節するものであり、なかにはsiRNAをつくって調節を行うものもある。

 

 

 

 

DNAメチル化とは

DNAメチル化は、ほとんどがシトシン(C)で生じ、遺伝子発現を抑制します。特に、CGという配列が集中して存在する領域(CpGアイランド)の70%−80%程度のシトシンがメチル化されています。遺伝子プロモーター領域のCpGアイランドは、最初はメチル化されていないことが多いですが、発生や分化に伴ってメチル化を受け、遺伝子発現が抑制されます。がん細胞では、がん抑制遺伝子の発現がCpGアイランドの異常なメチル化によって抑制されています。

 

MBDタンパク質による転写抑制

DNAのメチル化によって転写因子の結合が阻害されますが、さらにメチル化DNAを特異的に認識するタンパク質によって、転写不活性なクロマチン状態が形成されることにより、より安定的に遺伝子発現が抑制されます。このようなタンパク質のメチル化DNA結合ドメインとして、最初に同定されたドメインが、MBDです。MBDをもつタンパク質(MBDタンパク質)は、ヒストン脱アセチル化酵素(HDACやSIRTなど)や、ヒストンH3の9番目のリジンをメチル化する酵素などと相互作用し、クロマチン凝集を引き起こすことで、転写を抑制します(図.メチル化DNA・MBDタンパク質・HDACによるクロマチン構造の変化)。哺乳類では、MeCP2、MBD1、MBD2、MBD4の、4種類のMBDタンパク質があります。

 

DNAやヒストンの修飾が次世代の細胞に受け継がれるメカニズム

DNAやヒストンの修飾は、核酸修飾酵素などの働きによって、細胞が分裂しても引き継がれていきます。 DNA複製直後、鋳型となった元のDNA鎖はメチル化されていますが、新生されたDNA鎖ではまだメチル化されていません(ヘミメチル化)。このヘミメチル化二本鎖DNAに、UHRF1やDNMT1などのタンパク質が結合して、新生鎖を鋳型鎖と同様にメチル化します。このようなメチル化パターンの継承をDNAの維持メチル化といいます(図.複製後のDNAメチル化パターンの継承)。さらに、DNAに結合するヒストン量も2倍に増え、ヒストン修飾も受け継がれます。