医学生のeveryday

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医学生の分子細胞生物学学習日記(28)

有性生殖

有性生殖をする多細胞生物…特殊化した生殖細胞だけがゲノムの写しを生物の次の世代に受け渡す。生殖細胞は、体内にあるほかの細胞の半分の数だけ染色体をもつ。体細胞は、進化の過程で自分自身の子孫を残さずに死ぬ運命にある。変異を次の世代に伝えるためには、生殖細胞を生み出す細胞系譜(生殖系列)を変えなければならない。

 

点変異

点変異…単一塩基対に影響を及ぼす変化。まれに起こるDNA複製または修復の誤りから生じる。

    大腸菌で起こる全点変異頻度は、各細胞世代あたり1010塩基対におよそ3塩基の変化

    ヒトの変異率は、子供と両親のDNA塩基配列の比較(および親の生殖細胞の分裂回数の概算)により測定すると大腸菌変異率の約3分の1 

    点変異は遺伝子の活性を破壊したり、ごくまれだが改善することがあるが、たいていはどちらでもない。ゲノムのあちこちに起こる点変異は、生物の見かけや生育能や生殖能力に全く影響せず(中立変異)、イントロンの大部分を含むDNA塩基配列が重要でない遺伝子領域に起こることが多い。中立変異がエキソン内に起こっても、コドンの3番目の塩基の変化で指定するアミノ酸が変わらない場合もあれば、指定するアミノ酸がよく似ていてタンパク質の機能に影響しない場合もある。

 調節DNAの変異の見分けはつきにくい

(タンパク質のアミノ酸配列には影響せず、また、遺伝子の翻訳配列から離れているため)

調節DNAに生じた点変異がタンパク質の生産に影響して生物に多大な影響を及ぼすことがある。

(例:三日熱マラリア原虫が結合する細胞表面受容体の発現に影響を及ぼす点変異のためマラリアにかかりにくいヒトが少数いる)

 調節DNAの点変異は、ヒトの乳の主要な糖の乳糖を消化する能力にもかかわっている。ヒトの最古の祖先は、乳糖分解酵素ラクターゼが乳児期だけ作られたため乳糖を消化できなかった(乳糖不耐性)。数万年前に家畜から乳を得るようになると、偶発的変異により生じた変異遺伝子を持っているヒトは成ヒトでもラクターゼをつくり続けるようになった。(1万年前)乳を摂取するヒトは、乳糖消化能力に関する変異体ともいえる。