医学生の分子細胞生物学学習日記(18)
転写 遺伝子のプロモーター領域がRNAポリメラーゼに結合して正しい方向を向かせると、転写が始まる
プロモーターには、転写開始部位とその上流側に約50個の塩基配列がある
ここにはRNAポリメラーゼによるプロモーターの識別に必要な部分があるが、そこがσ因子(細菌)、転写基本因子(真核生物)のようなポリメラーゼと結合するタンパク質の認識部位となる。
調節DNA…プロモーターの他に必要な、遺伝子のスイッチのオン・オフに必要
細菌:10塩基対程度と短く、1種類のシグナルで働く
真核生物:非常に長くて1万塩基対以上になることもある
転写を調節するスイッチとして働くのは、調節DNAへの転写調節因子の結合である
多くの場合、タンパク質はDNAの二重らせんの主溝にはまり、溝の中で塩基対と細かく何か所も接触する。個々の結合は弱いが、普通10~20の結合が形成されるので、合算すると非常に特異性の高い強力な相互作用となる。
転写調節因子は、二量体をつくってDNAと結合することが多い。
(DNAと接する部分が2倍になり、結合強度と特異性が非常に高くなる。)
大腸菌のトリプトファンをつくる5つの生合成経路の酵素の遺伝子は染色体上の1か所にまとまっていて、1個のプロモーターから転写されて1本の長いmRNA分子が作られる。
そろって転写される遺伝子の集まりをオペロンといい、オペロンは真核生物にはほとんど見られず、遺伝子はここに転写、調節されている。
細菌は多数の遺伝子の発現を、環境から得られる栄養源の種類に応じて調節している。
(トリプトファンの例)
プロモーター内に転写調節因子が識別するオペレーターという短い塩基配列がある。この配列に調節因子が結合すると、RNAポリメラーゼのプロモーターへの結合が妨げられ、このオペロンの転写が阻害される。(転写調節因子:トリプトファンリプレッサー)
トリプトファンリプレッサー(転写抑制(リプレッサー)タンパクの一つ)はアロステリックタンパクであり、トリプトファンが結合すると三次元構造が微妙に変化してオペレーター配列に結合できるようになる。
トリプトファンリプレッサーは細胞内に常に存在する。
リプレッサーは、ある物質が周囲から得られるか否かに応じて、その物質を最終生成物とする生合成経路の触媒酵素群を合成するか否かを切り替える、単純なスイッチである。