医学生の分子細胞生物学学習日記(32)
動く遺伝因子
動く遺伝因子…染色体上のある場所から別の場所へと移動できるDNA配列
この過程で、既存の遺伝子の機能を壊したり調節を変えたりすることも多く、動く遺伝因子と既存遺伝子の断片が融合して新しい遺伝子ができることもある。動く遺伝因子が翻訳配列の中に飛び込むとその遺伝子の活性が深刻な影響を受けることがある。
(ヒトの血友病を引き起こすいくつかの変異は、こうした挿入変異によって活性のあるタンパク質が作られなくなった場合である)
動く遺伝因子の活性が既存の遺伝子の調節様式を変えることもある。
(調節DNA領域に因子が入り込み、遺伝子発現の場所と時期に顕著な影響を及ぼすことも少なくない)
多数の動く遺伝因子には特定の転写調節因子が識別するDNA塩基配列がある。動く遺伝因子が遺伝子の近くに入り込むと、遺伝子がこの転写調節因子の制御下におかれ、発現パターンが変わることもある。動く遺伝因子は特に多細胞の動植物の体の基本設計の進化に重要な役割を果たしてきた。そして、動く遺伝因子は相同組み換えの標的となってゲノム編成を変える機会を与える。